-Suzuki Connect-インドにおけるコネクテッドサービス展開

-Suzuki Connect-インドにおけるコネクテッドサービス展開

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熊瀧 潤也
経営企画室 コネクテッドセンター 本社担当
スズキ株式会社

スズキ株式会社コネクテッドセンターの熊瀧潤也からは、「Suzuki Connet」がなぜ日本ではなくインドでコネクテッドサービスを開始したのか。コネクテッドサービスで実現したい世界について語っていただきました。

インドの交通事情〜インドとスズキの関係性とは

弊社は日本に先駆けて、昨年度、インド市場でコネクテッドサービスを展開しました。

スズキは他社から遅れること十数年、ほんの2年半ほど前にコネクテッドカーとその周辺の事業開発を進めるべく、コネクテッド事業プロジェクトを立ち上げました。最初は私が一人で担当していましが、今ではコネクテッドセンターという大層な部署名をつけてもらえるまでに成長しています。

ここで、「なぜインドに?」と疑問に思われることと思います。みなさんがインドと聞いて思い浮かべる風景ってどんな感じでしょうか。雑多なイメージだとか、牛や象が道を歩いているとか、カレーとか、そういうイメージが浮かぶのではないでしょうか。いずれにしても、「発展途上国としての原始的な風景」を真っ先にイメージすることでしょう。もちろん、実際にそういう風景の場所はありますし、インドには発展途上国として解決すべき社会問題が山積している国です。

インドの交通に関する課題1. 交通事故の多さ

車が多いうえ、交通が混在している状況なので、事故に合いやすいのは目に見えてわかります。交通の課題は非常に大きいですし、私たちも真摯に受け止めているものです。これは2017年のデータになりますが、登録されているだけでも1年で交通事故が46 万件以上も起きており、約 15 万人の交通事故死亡者が出ています。日本では年間 3,000 人ぐらいの交通事故死亡者が出ていますが、人口から言ってもこの死亡者数は多すぎます。何とか解決していかなければならないと思っています。

インドの交通に関する課題2. 車両盗難

デリーでは毎日125 台が盗難被害にあっていると言われていますし、全国でも年間 20 万台以上の車両が盗難されているという事実があります。インドはまだモータリゼーションが始まったばかりで、日本みたいに市場が成熟していません。車の購入台数が4000 万台ぐらいですが、そのうちの 20 万台が毎年車両盗難されているのです。

インドの交通に関する課題3. 交通渋滞

インドに行かれた方は経験されているでしょうが、デリーを中心として非常に交通渋滞がひどく、移動するのに大変時間がかかります。
交通渋滞がひどい都市をいろんな指数でランキングしているサイトがあるのですが、その中でインドはコルカタ、デリー、ムンバイ、バンガロールの4 都市がランクインしています。スズキの工場があるデリー近郊、空港の近くにウルバーノという街がありますが、実はそこも渋滞がひどく21 位にランクインしていました。

また大気汚染もひどい。よく、中国におけるPM 2.5が…とニュースで聞きますが、実際にはデリーのほうが汚染がひどいときがあります。出張で訪れたときも、季節にもよっては100m先の建物が真っ白で見えないなんてことが結構ありますから。

弊社は日本と比べて、インドで非常に大きなシェアを獲得しています。インドのモータリゼーションが始まるような段階からずっとシェアをいただいていますので、インドで売られている車の2台に1台はスズキのバッチがついている。路上に走っている車のおよそ半分がスズキの車ということになりますので、交通に関する社会課題を作り出している側の人間としては、早急に解決策を考えなくてはならないと感じております。

デジタル国家になりつつあるインド

このようにインドには発展途上国としての姿、社会課題が数多くある反面、実はデジタル大国でもあるのです。アメリカの有名な IT 企業のトップはみんなインド人になってしまうというように。インドからは IT 人材が多く輩出されますし、実際に、デジタル化がすごい勢いで進められています。

スマートフォンユーザーという切り口で見ますと、2016年ごろのデータでは、普及率が3割を切っていましたので、日本やその他の国に比べたら圧倒的に普及率が低いと思うでしょう。ただし登録されているユーザー数で見ると、すでに3億を超えていますので、日本の3倍近くのスマートフォンユーザーがいるということです。言い換えると、すでにデジタル大国でありながら、これからさらに伸びるポテンシャルがあるということ。それはインターネットの普及率という切り口から見ても同じで、2018 年のインターネット利用率は4割を切りますが、SNSのユーザー数で見ると、Facebookで3億人以上、WhatsAppにも同程度のユーザー数がいるので、非常に巨大なマーケットであり、なおかつこれからも伸びるという市場なのです。

そのうえ、データ通信の料金が段違いに安い。1GBあたりの通信費を日本と比較すると、30分の1の値段でデータ通信ができるのです。私も月に一度のペースでインドを訪れますが、自分のデュアル SIM のスマホにインドの SIM を入れてつなげても、「電話かけ放題、 SMS送り放題、毎日1.4 GBのデータ通信ができる」というプランが、1年間でたったの1,700ルピー(およそ2,600円)。それでもインド人にとっては「高い」と言われますけど。コネクテッドやデータ活用をするとなると、データ通信料が重荷になりますが、インドに関しては、それがすんなり行える可能性があるというか、つながりやすい環境にあるということが言えると思います。

 “Digital India”というスローガンがあるほど、インド政府がデジタル化を強力に推進し、多くの分野でデジタル化を政策として入れ込んでいます。たとえば、マイナンバー制度。銀行口座に紐付いたマイナンバーを一気に普及させて、現在では10 億人が利用していると言いますし、そのへんの道端で野菜を売っているような業者でもPaytm というスマホアプリが普及していて、キャッシュレス決済ができる。ある意味、先進国を一気に飛び越える勢いでデジタル化が進んでいるのです。非常に安いデータ通信料のインフラに下支えされ、デジタル化が急速に推進されている、そういう背景があります。

インドでコネクテッドするには

ここで本題に戻りましょう。発展途上国として解決すべき社会課題が非常に明確であるというシチュエーション、そしてデジタル化が急速にスピードアップして進んでいること、この 2 つの状況を組み合わせたときに、非常に大きなポテンシャルがあると感じたため、インドでコネクテッドを始めました。ここまでお話を聞いていただきましたら、インドという国のおもしろさと、挑戦しがいのある市場をわかっていただけたかと思います。スズキが最初にコネクテッドサービスを展開する国として選んだ理由についても、ご納得いただけたのではないでしょうか。

インドでコネクテッドサービスを始めるにあたって、さまざまな調査を実施しました。インドの東・西・南・北それぞれの大・中・小の計12の都市で、のべ 600人ぐらいの方々に、実際に通信器を積んだ車でこんなことができるんですよとデモをしてまわりながら、どんな機能が欲しいかを聞いて回っています。カーユーザー以外にコネクテッドの話をしても想像できないでしょうから対象は車を持っている方々に絞りました。インドは成人男性の10%しか車を持っていませんし、そもそも持っている人々はかなりの富裕層。実際にヒアリングすると車を2台以上持っている人は50%を超えていました。そして多くが運転手を雇っている。インドでは日雇い運転手の制度があり、必要に応じて運転手がつくというサービスもあるので、インドで走っている車の多くが運転手付きなのです。

駐車場を調べると、自宅の駐車場と言っても、けして安心・安全とは言い難い場所です。インドの人々にとっての安全な駐車場とは、私たちからすると、これは本当に安全なの? というところが多い。これは盗難につながっていきますし、レッカー移動されて持っていかれるケースも相当あるようです。実際にこの話をインドで十数人のインド人としていた時も、レッカー移動の話になるとみんなあるあると頷いていましたので、そうしたリスクが日常の困りごとになっていると実感しました。

他にも細かいデータを取りながら、インドユーザーの求める機能は何かを聞いた結果がこちら。トップには E-Callや B-Callが並びました。事故や故障などが起きたときにすぐに対応してくれるサービスが欲しいということです。インドの風景を思い浮かべてください。村と村の間には街灯も何もない道が続いています。夜にこの真っ暗な道を走っていて事故を起こしたら? 故障したら? これが大きな心配事になっていることがわかります。車両トラッキング、渋滞予測、このあたりは納得と言えるでしょう。

あとおもしろいのが、燃料アラート。燃費を気にするオーナーさんの意向もありつつ、実際にはドライバーが小遣い稼ぎのために燃料を抜いて売るというケースもあるのでそれを知りたいと。そのへんはインドの駐在員あるあるになっているようで、実際本当に走ったのか、盗まれたのかを含めて、車がどのぐらいの燃料を消費しているのか、興味があるということでした。日本では考えられませんよね。
これらの調査から、インドでコネクテッドサービスを開始するにあたりどのような機能を追加するかを決め、サービスを開発してリリースしました。 E-CallやB-Callはもちろん、位置情報を共有するサービス、ジオフェンシング、燃費がわかる機能もあります。ユニークなのが、次の2つ。

まずは位置情報のシェア。家族や友人だけでなく運転手にも自分の位置情報をシェアできるようにしました。通勤で運転手におくってもらう場合、オフォスに到着した後の時間は帰りまで運転手がどこかに行ってしまいます。Uberのバイトをしているという話もありますが、車の所有者が移動したいと思った時に運転手が近くにいて、すぐに帰れる状態であることが望ましいので、この機能を搭載しました。

2つ目がレッカー移動アラート。先ほどもお話ししましたが、頻繁にレッカー移動をされますので「車両を持ち上げて引っ張る」という一連の動作を検知すると、アラートが飛ぶ仕組みにしました。一度レッカー移動をされるとどこに自分の車があるのか探し回らなくてはなりませんので、こうした機能に需要があるのです。

サービスは普及させなければ未来につながらない

コネクテッドやシェアサービスなど、新しいものを世の中に提供するならば、使っている方々が「これはいいね」と確実に語れるものでなければ、普及していきません。それがインドのコネクテッドサービスを通じてわかったことです。日本ではそう思えるサービスを明確に定義することに、私たちはとても苦労しています。それが日本で展開できない理由でもありますが…。そこが曖昧だと普及しませんし、普及しなければ未来にもつながっていきません。ですので、足元の第一歩は、どのようなニーズがあるのかを確実に拾っていくことが重要だと思っております。お客様のニーズをどうやって拾っていくか、どのようにサービスの最適化していくのか、私たちが拾いきれない多くのところをスマートドライブさん始め、ここにいらっしゃるみなさんと協力して、より良いサービスを提供していきたい。それが私たちの希望です。

インドは非常に早いスピードで発展しています。毎月訪れるたびに、空港からホテルに行く新しい道ができていて景色が変わっていくように。スピード感がある国なので、今私が話したようなことも、すでに古新聞になっているでしょう。ただこういう歴史は非常に興味深いものですので、本日ご紹介させていただきました。ありがとうございました。

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