ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

「Pyrenee Drive」を手掛ける株式会社Pyrenee 代表取締役 (CEO) 三野 龍太さまへお話を伺いました。まずは、創業の経緯や製品の特徴についてお話しいただきます。

インタビュイー:株式会社Pyrenee 代表取締役 (CEO) 三野 龍太さま

人の命を守るもの、世の中の役に立つものを作りたい

まずは三野さまの自己紹介をお願いします。

株式会社Pyrenee(ピレニー)で代表を務める三野龍太(みの・りゅうた)です。私のファーストキャリアは、建築工具メーカーでの建築工具や建築機械の製品開発です。ここで多くの苦労と楽しさを経験しながら製品づくりに10年ほど携わりました。

建築工具にはどのようなものがありますか。具体的な事例があれば伺いたいです。

たとえば、ビルの中に設置されているエアコン。エアコン自体は大手メーカーが作りますが、それを新築のビルに設置するには、室内機と屋上に並んでいる室外機の間をパイプでつながなくてはなりません。この時に数多くの機械類と工具類が必要になりますが、そこで利活用できる製品を作るのが当時の仕事でした。

私が担当していたのは、ビルの建設現場で困っていたり、必要とされていたりするものを探し出し、それを解決するための商品を開発すること。当時のエアコンにはフロンガスが使われていて、室内機と室外機の間を通るパイプの中を循環して作動していました。部屋から屋上までをつなぐパイプは建物によって何十メートル、何百メートルにもなりますが、配管をつなぎ合わせる際、どこか一つに溶接箇所に漏れがあるとフロンガスが漏れ、エアコンが効かないどころかオゾン層を破壊することになってしまうのです。それに、建設後に漏れが発覚すると、壁を剥がすなど、大変手間のかかる作業が発生してしまいます。そこで最初の時点で漏れをしっかり感知できるように、工具セットを作りました。これはフロンガスを入れる前に無害な窒素で圧を入れ漏れがないかを圧力で確認できるというニッチな製品です。前職ではこのような製品をいくつか開発してきました。

なぜ、ご自身で起業されたのでしょうか。

自分で全てをプロデュースしたいという思いが強かったからでしょうか。退職してから、まずは妻と一緒に小さな雑貨メーカーを創業。ここでは大きなシリコンでホールドして高さや角度を自由にできるiPad用のスタンドや、子供が頭をぶつけないようにするためにドアノブのカバーなどを作り、インテリアショップや東急ハンズ、ロフトに卸していました。

しかし雑貨を作る中で、もっと作りがいがあって誰かの役立つ製品を作りたいと思うようになって。一念発起してPyreneeを創業したのです。やりがいのある、作りがいのある製品とは何か。その問いから真っ先に浮かんだのが人の命を救ったり助けたりできる製品でした。この製品やサービスのおかげで危険から身を守ることができた。そう思われるように、人の命を守る製品を作ろうとここから新たな製品開発に勤しみます。

人の命を救う製品と聞くと、エアバックや防災グッズなどさまざまな製品が考えられますが、その中でドライブレコーダーを選ばれた理由は?

私は大型犬を飼っていることもあって、都内でも毎日のように移動時は車を利用しています。ただ、便利ではありますが、車の運転は常に危険が伴うものです。悲痛な事故のニュースもよく目にしますし、道路へ出ると小さな子どもが走り回っていたり、横断歩道を使わずに道路を縦断する人がいたり、こちらが注意深く前を見ていても予測できない事態が発生するので気が気じゃありません。運転していても、万が一交通事故に遭遇してしまったら怖いなという気持ちをずっと持っていたんです。

そこで改めて交通事故について調べてみると、事故の原因のほとんどがドライバーのヒューマンエラーで起きている。ならば、そのヒューマンエラーを無くすための装置を作ることができないかと考えたのです。ドライバーの隣で道路を確認しながら見落としや判断ミスを激減させるパートナーを作ろう。AIを使って道路上の物体を認識し、危険予測を行えないだろうか。そう思いついて技術的なことを調べた結果、実現可能だとわかって即時開発に着手しました。

ドライバーを守るアシスタントとして

現在開発中のPyrenee Driveについて特徴などをお伺いできますか?

コンセプトはドライバーのアシスタントになること。ドラレコの機能もありますが、あくまで危険を察知して事故を防止するためのアシスタントと位置付けています。重要な部分の技術開発は終わり、今は最終的な開発の部分と量産化できる体制を整えている段階です。2020年中のリリースを予定しています。

製品自体はドライバーの正面、もしくはダッシュボードの中央に固定した状態で利用していただきます。ステレオカメラを搭載していますので、3次元で道路上を撮影できることが大きな特徴ですね。

3次元での撮影にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

交通事故を防ぐにはドライバーが運転しながら現状を認識しなくてはなりませんが、その際に重要なのが、歩行者や他の車の現在地と自分から見てどの向きで進んでいるかという位置関係の変化を知ることです。ステレオカメラではその位置関係が3次元で見えますので、自分と歩行者、車との位置関係の変化が正確に把握できるんです。逆に言うと、ステレオカメラでなければそれら位置関係が把握できません。

ステレオカメラのドライブレコーダー自体、ほとんど見かけませんよね。

ステレオカメラを使えるようにするには非常にシビアな調整が必要なため、後付けで製品化するのが難しいのです。私たちはAIの物体認識とステレオ処理の2つを組み合わせることでその難問を解決しました。また、Pyrenee Driveのもう一つの特徴が強力なGPUを内蔵していること。これがあることで、走行中の状況認識と危険予測というAIの重たい処理を遅延せずリアルタイムで行うことができます。これらによって、車線のはみ出しを確認しつつ、高精度で車・歩行者・自転車・バイクを認識し、その動きを追跡することができるのです。

人と車、それぞれ分けて認識しているのですね。

車に関しては3次元認識で他車がどの方向を向いているか、枠で囲うだけでなくティッシュ箱のように立体のボックス上で認識をしています。これは、人が車を見る時に無意識に認識しているのと同じ状態。道路上の人や車を認識するAIシステムは他にもあるようですが、3次元認識ができる製品はほとんどないのではないでしょうか。このカメラでは距離も正確に測ることができるんです。

>>後編へ続く

登壇資料を無料ダウンロードいただけます

登壇資料を無料ダウンロードいただけます

無料ダウンロード
bnr_MDP2020-600x500