スマホや自動運転に活用される加速度センサー、ジャイロセンサーとは

スマホや自動運転に活用される加速度センサー、ジャイロセンサーとは

皆さんが日頃使っているであろうスマホやタブレットから、今後が楽しみなロボットや自動運転車まで、ここ十数年の間でもテクノロジーは急速に発展しています。

そういったデバイスの魅力や今後を語る上で外せないのが、裏側で使われているセンサーやセンシングの技術です。中でもカメラの手ぶれ補正やエアバック、スマホアプリなどに活用さている「加速度センサー」や「ジャイロセンサー(角速度センサー)」は非常に注目を集めています。

とはいえ加速度センサー、ジャイロセンサーについてはよく知らないという方もいらっしゃるはず。今回は具体例を取り入れながら、その仕組みや活用方法について紹介していきます。

加速度センサーとは

Photo credit: oskay

加速度センサーは文字通り、1秒における速度変化(加速度)を測定するセンサーのことです。

測定するものの中には重力加速度も含まれるため、人の動きや振動、衝撃まで検知できます。3軸方向(X軸・Y軸・Z軸)に適応するセンサーであれば水平状態を検出でき、冒頭で紹介したようにカメラの横方向による「手ぶれ補正」などにも加速度センサーの機能が応用されているのです。加速度センサーを用いる家電製品では、スマホやタブレット、ゲーム機のコントローラー、パソコンのHDDなどがあります。

スマホには歩数計アプリや傾きによる電源のオン・オフなど、様々な動きに対して特定の機能を発揮する仕組みが搭載されていますが、これらは加速度センサーによって実現できるのです。またGPSと組み合わせることで位置情報に特化した新しい遊び方が誕生し、昨年アメリカの企業であるNiantic, Inc.が開発した「Pokémon GO」が有名になりました。

ゲーム機のコントローラーでは、過去に任天堂から発売された「Wiiリモコン」に加速度センサーが搭載されているのも有名です。こちらは3軸方向の動きを検知できるため、実際にコントローラーを手で動かして、ゲーム上での「ボールの打ち返し」や「ゴルフの素振り」などを体験できます。

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パソコンやビデオカメラに用いられるHDDでは落下時の衝撃を検知する目的で、内部に加速度センサーを搭載しているものがあります。HDDは非常に繊細なパーツのため、振動や衝撃に対してとても敏感。そのため、内部の加速度センサーが落下時の重力加速度を検知し、電源を強制的にオフにして内部データを保護するのです。

ジャイロセンサー(角速度センサー)とは

ジャイロセンサーとは、基準軸に対して1秒間に角度が何度変化しているかを検知するセンサーのことです。

物体の回転運動を知ることができるため、加速度センサーでは検知できない「回転の動き」を測定することが可能。スマホやタブレッドなどで画面を傾けると、自動で見やすい方向に位置が切り替わるのも、ジャイロセンサーの機能が応用されているからなんです。

実はジャイロセンサーはつい最近登場した技術というわけではなく、19世紀頃から人工衛星や飛行機などに用いられていました。近年ではナノレベルで部品の小型化が進み、先にも述べたスマホやタブレット、カーナビ、腕時計などへ搭載されるようになっています。また、ジャイロセンサーは加速度センサーと一緒に搭載されていることが多く、加速度を検出する3軸と角速度を検出する3軸の合計「6軸センサー」が主流となっています。

加速度センサーの原理

加速度センサーは3軸方向の加速度検知を目的とした慣性センサーであるため、主に「重力、振動、衝撃」を測定できます。小型加速度センサーの多くはMEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術により製品化が行われており、極小のものであれば幅が10mm以下の商品まであるため、様々な機器に搭載可能です。

加速度センサーの一般的な測定方式は、バネと重りが一体化した部品に対して、加速度が発生した時の位置を測定するといったもの。それぞれの方向に取り付けた重りが、外部からの衝撃により移動することで、その位置変化をセンサー内部で測定。後はバネ係数などを考慮した力学の方程式(フックの法則)に数値を入力することで、加速度を導き出すことができるのです。

ジャイロセンサーの原理

上述しましたが、ジャイロセンサーは回転や向きを検知するセンサーのことで、物体の回転速度などを測定できます。細かい動きを検出できる慣性センサーの一種として開発が進み、世の中の家電製品やデバイスなどにお馴染みの部品として定着してきました。

有名な活用法としてはカメラの手ぶれ補正やクルマの安全システムなど。また、ジャイロセンサーも加速度センサーと同様、MEMSによる繊細加工技術が用いられています。

ジャイロセンサーの一般的な測定方式は「コリオリの力(転向力)」の原理を利用して検知されます。コリオリ力とは、移動する質量に回転を加えた場合、その移動する方向に対して垂直方向に働く慣性力のことです。回転を伴う中での慣性力は、他にオイラー力や遠心力がありますが、コリオリ力もその一つとなりジャイロセンサーにおける重要な力学要素となります。

具体的な活用例

いくつか例をあげながら加速度センサー、ジャイロセンサーについて述べててきましたが、もう少し具体的な活用例を紹介していきましょう。

スマホ、タブレット

日本で最も売れているモバイル製品はApple社の『iPhone』や『iPad』が有名ですが、こちらの製品には多種多様なセンサーやが搭載されているのは周知の話。加速度センサーやジャイロセンサーはもちろんのこと、輝度センサー、近接センサー、電子コンパス、GPSなどが組み込まれており、まさにテクノロジーの塊です。

iPhoneの加速度センサーは、主に人の動きを感知することに重点を置いており、端末を動かすことにより画面の位置変更や歩数計のカウントなどが行われたりします。

近年では、就寝時に加速度センサーやマイクを活用して体の動きを検知することで、睡眠の質を高めるアプリまで登場。たとえばSleep Meisterというアプリでは加速度センサーで人の体動を感知し、眠りの浅い(レム睡眠)時にアラームを鳴らしてくれます。

またレースゲームのアプリなどは、画面を傾けることでハンドル操作ができるものもあるため、ここでも加速度センサーやジャイロセンサーの技術が活用されています。

カーナビゲーション・システム

カーナビに搭載されている加速度センサーやジャイロセンサーは、主に移動した距離やクルマの移動方向を検知するのに役立っています。カーナビのシステムはGPSやネット回線を通して現在位置を割り出すのが一般的ですが、これらの電波を受け取れないトンネル内などの場所では、搭載している各センサーが補助的に機能して位置情報を導き出しているのです。

これらの機能はスマホなどのモバイル製品でも同等の役割を果たすため、カーナビを搭載していないクルマでは、地図検索アプリで代用する方が増えています。

デジタルカメラ、ビデオカメラ

カメラによる撮影時に、人の動きによる縦横の動きや振動を各センサーが検知し、いわゆる「手ぶれ」を抑える役割を果たします。まずジャイロセンサーがカメラの揺れを検知し、その揺れの中から手ぶれ動作を抽出した後、補正したものをレンズの内部機能に反映。これらの動作は高速で内部処理されるため、初心者の方でも自然な撮影を楽しむことができるのです。

SRSエアバッグ・システム

乗員保護システムとして有名なエアバッグにも加速度センサーが活用されています。衝突時による衝撃をセンサーが検知した瞬間、内部に搭載されているインフレータに点火して袋状の部品にガスが送られます。この動作はまさに一瞬の出来事なので、センサーの役割が人の命を左右すると言っても過言ではありません。

近年、エアバッグの不具合が問題視されましたが、こちらはガスが充填されているインフレータの構成部品が爆発時に飛散したことによる事故のため、センサーによる影響ではありません。

エアバッグ・システムは過去に機械式加速度センサーが用いられていましたが、半導体技術の発展により「MEMS」が登場し、現在では多くの自動車のエアバッグにMEMS加速度センサーが用いられています。先にも述べた通り、加速度センサーは衝撃も検知するため、エアバッグにはなくてはならない部品として活用されています。

人工衛星

ジャイロセンサーは、人工衛星の姿勢を検出するために採用されています。対して加速度センサーは無重力空間のため、搭載されていてもあまり使用されることはありません。隕石などが衝突した際に、トラブルを検知するセンサーとして役に立つかもしれませんが、宇宙飛行の状態で重きを置かれているのは、基本的にジャイロセンサーとなります。

多様な研究分野

技術者の中には、ネットから直接購入して目的の機器に組み込む方もおり、特に人の動きや水平状態を検知するセンサーは、ロボット工学の分野で盛んに活用されています。二足歩行によるロボットの開発は非常に難しいため、各センサーを駆使して姿勢を維持しながら歩かせねばなりません。

このことから、ロボット工学を専攻する学生や研究者で加速度センサーやジャイロセンサーを購入する方が多く、小型のものでも1,000円以内で買えるため、手軽に工作できるパーツとして人気があります。

また、加速度センサーは地震を検知する役割を担っており、これらの研究分野では計測器に搭載するのが一般的となっています。近年では、スマホに搭載されている加速度センサーを使用して地震を計測するアプリ(MyShake)が無料配布されており、将来の地震予測や解析に繋がる試みが行われています。

出典 : MyShake 公式サイト

開発メーカーと製品情報

せっかくなので、実際に加速度センサーやジャイロセンサーを開発・販売している企業もいくつか紹介します。

村田製作所

加速度センサ | 村田製作所 – Murata

村田製作所が開発している加速度センサーは、MEMS技術を活かしたシリコン容量型製品。機械に大敵な高湿環境や温度変化にも耐久性があり、測定方向は水平または垂直の3軸方向に対応しています。

三菱電機

三菱電機 半導体・デバイス : 製品情報 | ドライバIC・センサ[センサ]

静電容量型の加速度センサーを販売している三菱電機。信号処理用ASICを搭載しており、各センシングに対して信頼性の高いデータを得ることが可能です。

パナソニック

機器用センサ | 制御機器 | 電子デバイス・産業用機器 | Panasonic

先進のMEMS技術により、オフセット温度特性に優れた加速度センサーを販売しているパナソニック。カーエレクトロニクスに関連した機器に搭載され、高精度・高信頼性を強みとした製品を販売しています。

ワコー

加速度センサ – 株式会社ワコー

ピエゾ抵抗型3軸センサーを販売しているワコー。「小型、軽量、高精度」を追求した商品力と生産性にも優れ、国内の家電製品や工作機械、ゲームのコントローラーなどに活用されています。

セイコーエプソン 電子デバイス

ジャイロセンサ | センサ | 製品情報 | エプソンデバイス

セイコーエプソンはジャイロセンサーを主に取り扱っています。水晶結晶を素子として使用しているため、高性能・高安定特性に優れています。サイズ、感度の調整、デジタル・アナログのインターフェースなど、多様な機器に対応する商品が提供されています。

アナログ・デバイセズ

加速度センサー | アナログ・デバイセズ – Analog Devices

センサー開発における消費電力の軽減、ノイズの除去、温度特性などの点で業界をリードしているアナログ・デバイセズ。各アプリケーションにおいて「加速度・傾き・衝撃・振動」を高精度で測定することが可能となっています。

北陸電気工業

北陸電気工業/製品情報/製品カタログ(カテゴリ別)>センサ

富山県に本社を置き、センサー部品を開発・製造している北陸電気工業。販売しているピエゾ抵抗型3軸センサーは、傾斜検出、投げ上げ・自由落下、歩数計などの用途に対応が可能。また、同社の技術は有名ゲーム機のコントローラーにも採用されました。

自動運転車やロボットにも活用

現代ではセンサー技術が進化したことにより、自動運転にも加速度センサーやジャイロセンサーの技術が応用されています。自動運転は車載カメラで前方車を認識することが主な仕様となっていますが、周辺の細かい変化や動作を検知するにはセンサー部品が必要不可欠です。クルマは次世代のスマートデバイスの一つと見られているので、将来はスマホやタブレットと同様に、センシング技術が積極的に活用されることは間違いないでしょう。

また、ロボット製品に関してもセンサーの役割は大きな影響を与えます。二足歩行をするためのバランス検知はもちろんのこと、腕を動かすなどの動作一つひとつに各センサーが反応して正しく制御する必要があります。今後は人の動きに近いロボットが開発される可能性が高いため、センシング技術の進化が開発業界で強く求められている状態です。

およそ10年ほど前、モバイルデバイスやゲーム機のコントローラーなどにセンサー部品が初めて採用された時は、その機能性から珍しいものでも見るかのような扱いを受けていましたが、今では切り離せない部品として成長を遂げました。クルマ産業、パソコン・モバイルデバイス、家電業界、ロボット産業、宇宙工学など、加速度センサーやジャイロセンサーはどの分野でも応用できる技術として、将来は更に市場が拡大することを期待されており、今後も目が離せません。

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