移動の進化とCOVID-19の影響をどうプラスに変えていくか​

移動の進化とCOVID-19の影響をどうプラスに変えていくか​

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北川 烈
代表取締役
株式会社スマートドライブ

自動車業界は今、100年に一度の変革期と言われていますが、CASEやMaaSに代表されるようなトレンドを踏まえて、今後どのように移動が変わっていくのでしょうか。また、同じく100年に一度と言われるCOVID-19(新型コロナウイルス)が、移動の進化にどのような影響を与えるのか、移動の未来に向けてCOVID-19の影響をどのようにプラスに変えていけば良いのか、本イベントに込めた想いとともに語りました。

はじめに

いま、新型コロナの影響で誰もが大変な状況下に置かれていることと思います。今日、明日を必死に生きてらっしゃる方がたくさんいる中で、未来の話をベースにしたカンファレンスを実施するのは本当に正しいことなのかと、何度も社内で議論を重ねてきました。

私たちが取り組む移動の分野においては、コロナの影響で新しいサービスが次々と誕生したり、このタイミングをチャンスに変えていけるようなポジティブな考え方も一部で出てきたりしています。そこで新たに学ぶ場を設けたい、参加した人にいろんな考えやアイデアを持ち帰っていただきたいとの思いで、「Mobility Transformation Online」の開催に至りました。お力添えいただいたSchooさん、そしてチームメンバー、ご視聴いただいているみなさまに、まずは感謝を申し上げます。 

本イベントは、参加者が無料でオンライン生放送授業を受講できるSchooで実施しています。参加型の授業ですので、セッションを進めつつ、ところどころみなさまのご意見や質問に答えていくスタイルで進めていきます。このセッションでは、移動が今後どう変わっていくのか、現状と今後について考察し、今後の移動の可能性についてお話しさせていただきます。

スピーカーの自己紹介と会社説明

2013年の10月、私は東京大学大学院に在籍中、人やモノを始めとした移動体にまつわるデータ分析の研究をしていました。そしてこの研究をきっかけに、スマートドライブを創業。「移動の進化をテクノロジーで後押しする」をビジョンに掲げ、自動運転や電気自動車など、モビリティ関連の技術が発展する中で、それらをつなぐデータのプラットフォームを構築し、移動の概念や価値を変えようと取り組んでいます。創業期より、柏の葉のスマートシティで実証実験を行ったり、アクサ損害保険とともに走行スキルを連動させた保険を開発したりするなど、社会的にも意義があり、安全運転、交通事故、スマートシティといった文脈で利活用いただけるオープンプラットフォームを作ってきました。

従業員は現在およそ80名、半数がエンジニアやデータサイエンティストという構成の組織です。ビジネスモデルは、インプット、プラットフォーム、アウトプットと3階層の領域で展開しています。

弊社で開発しているデバイス以外にも、提携しているドライブレコーダーやカメラ、温度センサー、コネクテッドされた四輪車や二輪バイクなどのモビリティデータまで、さまざまなデータをプラットフォームに集約・解析しています。そして解析した結果を、大きく分けて4つのサービスでお客様へ提供しています。

Mobility DWH:プラットフォームのデータをうまく加工できるように提供するサービスで、多様なセンサーのデータに保険の事故情報やセールスフォース、天気情報など、さまざまな情報を掛け合わせてお客様が独自で分析できるというもの。

・SmartDrive Fleet:配送や営業、メンテナンスや送迎など、車を所有されている企業に向けて展開している、リアルタイムの車両管理サービス。安全運転診断や稼働状況がわかる走行データ、日報の自動化など、ドライバーの安全を守り、業務の効率化を促進します。

SmartDrive Cars:ドライバーにフォーカスしたBtoBtoCサービス。保険会社や従業員向けの安全運転を促進したい企業と提携し、安全運転をしているとポイントがたまる、スマホで自分の運転の振り返りができる、正しい運転をする人がちゃんと得をする仕組みになっています。

・SmartDrive Families:高齢者や免許取り立ての新米ドライバーの運転を見守る、BtoCサービスです。使い方は簡単で、シガーソケットにデバイスを挿すだけ。今、どこで運転しているのか、運転の状況はどうだったか、家を出てから何時間ほど経ったかといった情報がスマホで確認できます。

ここにあげたサービス以外にも、多くの企業様に弊社のプラットフォームをご活用いただくことで、新たなサービスの開発に着手いただいております。また、直近では共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤリティマーケティングと共同で、移動データを活用した新しいマーケティングの実証実験を来月から開始することになりました。

このように、自社サービスだけでなく、さまざまな業界のお客様さまと協業して新たなサービスを展開したり、企業間のコラボレーションを促進するエコシステムづくりに力を入れたりしています。「Mobility Transformation」では、お互いが考える移動の未来に関するビジョンを共有するなど、新しいコラボレーションが生まれるきっかけづくりの場を設けております。

スマートドライブが考える移動の進化

まずは、簡単にCASEやMaaSで世の中の移動がどう変わるのか、何がそんなに革新的なのかについて解説させていただきます。CASEとは、Connected、Autonomous、Sharing & Service、Electricの頭文字を取った造語です。

Connectedは自動車やその他モビリティのサービスに様々なセンサーを取り付け、常にインターネットへ繋がっている状態を示します。車の挙動や故障状態をリアルタイムで把握することで、事故が起きても、早急にロードサービスが駆けつけることができますし、車が盗難されたときはすぐに位置情報が特定できます。また利用に応じて保険料を変えたりと、データに基づいた様々なサービスを展開していくことができます。そして、Connectedは、そのほか三つの要素の基盤となるもの。データが取得できれば最適な配車も可能ですし、シェアリングサービスも利用しやすくなる。電気自動車の充電ステーション設置場所を検討する際にも役立ちます。

Autonomousは自律走行、つまり自動運転のこと。自動運転が普及すれば、事故の削減やドライバー不足が解消できますが、それと同時に今後の保険のあり方を考えていかなくてはなりません。今までは万が一の事故を考慮し、リスク分散のために保険に加入していました。そもそも事故がなくなれば、保険はどうなるのでしょうか。

また、自動運転車のシェアリングサービスができれば、スマホを利用して車を呼び、使用後は別の利用者の元へ自動でそのまま行く…という流れができるかもしれない。そうなれば、従来の自動車売り切りモデルが大幅に縮小していくでしょう。

SはSharingのSともServiceのSとも言われることもあります。一番分かりやすいのがUberやGrabといったライドシェアをベースにした総合的な移動にまつわるサービスです。所有から利用へと消費が変化していますし、今後は移動そのものをサービス化したものの利用者が増えていくと予想されます。MaaSにはいくつもの定義がありますが、スマートドライブとしては、移動のサービス化をMaaSと定義して説明していきたいと思います。

最後に解説するのがElectric。電動化によって変わる一番のポイントはエコではなく、部品の点数が圧倒的に減ることだと考えています。ガソリン車を一台作るには、部品の調達から組み立て、品質の管理に到るまで、非常に高度な組み合わせが必要とされてきました。しかし、電気自動車は部品の点数がガソリン車の10分の1程度。高度な生産技術の参入ハードルが下がることで、今まで自動車を生業にしていなかった会社でも開発が可能なため、Connectedなど周辺のサービスとセットで巻き返しを図る新興プレイヤーが増えているのが現状です。

ここまでざっくりと解説してきましたが、CASEと言われる技術やMaaSは何が革新的なのでしょうか。

これまでの自動車業界は、ディーラーに行って車を買う。車を買った人は次に保険を選んだり、メンテナンスや点検で整備に行ったりというのを、基本的には個別に行いますので、自動車メーカー、保険会社、オートローンなどの企業が個人にアプローチする構造がありました。しかし今後、MaaS事業者や各種データプラットフォーマーがお客様の情報を一括で預かってサービスを提供しはじめるようになると、自動車メーカーや保険会社が直接お客様に触れる機会が大幅に減ってしまいます。

通常、タクシーに乗車するとき、どのメーカーの車両か、保険はどこに入っているなど、気にしませんよね。それと同じことが起きるということです。ライドシェアやMaaSのサービスが増えていくと、お客様が相対するのはサービス事業者となり、自動車メーカー、保険会社、整備会社はどこがいいとか、悪いとか、気に留めることなくサービスだけを利用する。自動車メーカーとして、BtoC向けにサービスを展開していたものが、MaaS事業者に車を供給するBtoBへと変わり、場合によっては、下請けに見られがちな構造に変わる可能性がある。それが一番大きな業界の変化と言われております。

これらを踏まえて、どのように移動が進化するのか。前回のカンファレンスでは大きく二つトピックをあげました。

1つは、日常的な移動がますます効率化され、無駄な移動がなくなること。人類は紀元前から毎日、移動に2時間を費やしています。昔で言えば狩り、現代では通勤・通学。定常的な毎日の移動が今後どんどん効率化され、移動すること自体が少しずつ減っていくかもしれません。

もう1つが、新しい出会いや消費です。少し哲学的な話になりますが、人類は未開の地に移動しながら消費や創作を行ってきました。本来、人間はそういう生き物ですから、効率化によって浮いた時間を活用し、新しい場所へと移動して、新しい消費を生み出すことができるのではないかと思うのです。

このような世界観を実現するためには業界の垣根を超えた共創とコラボレーション、共に発信していくことが重要です。まずは現状を把握するために、自動車メーカーが実際にどのような影響を受けているのかを整理してご紹介します。

新型コロナウイルスが与えた、自動車メーカーへの影響

こちらは、主要な自動車メーカー3社が受けたコロナウイルスの影響を、各社のニュースリリースから抜粋してまとめたものです。

生産に関して言うと、3社とも減産し、大きな打撃を受けています。今はみなさん、外出を控えていますから、車の売れ行きも芳しくない。トヨタ社は、8工場のうち5工場を減産しましたが、5月からさらに全工場で生産台数を減らしていくと言います。GM社でも一部の組立ラインを停止しました。

今まで、トヨタ社は年間300万台の生産を維持し続けてきましたが、今年度はこれを割り込む可能性がある。生産が縮小されると、トヨタはもちろん、自動車部品の製造会社や周辺の工場で働いている方たちの雇用に大きな影響を及ぼすと考えられます。GMに至っては、トランプ大統領から人工呼吸器の製造を命じられるなど、自動車メーカーは数々の難題を突きつけられているのです。

MaaS領域では、どのような影響を受けているでしょうか。

代表格として、昨年上場したUberの株価の推移を追ってみましょう。これは、4月22日の株価です。ちょうど年始にコロナウイルスの影響が顕在化し始め、全世界に蔓延した2〜3月のタイミングで1株40ドルに推移していた株価がピークを迎え、そこから波を打ちながら停滞。ニューヨークのロックダウン開始後には、一時的にピークの約半分以下まで下落しました。日本を含め、各国で外出自粛、外出禁止となり移動が減ったことが大きな要因ですが、そこで同社は新たなニーズに対応すべく、個人間配送サービスをリリースしています。

競合であるGrabも同じような影響を受けており、同社のCEOのアンソニー・タン氏は、「COVID-19(新型コロナ感染症)は創業後の8年間でグラブを揺るがす単独で最大の危機だ。われわれの業務上、ビジネス、パートナーの生計に前例のない影響を及ぼしている」と説明しています。

サービスごとに見ていくと、ライドシェアサービスは、外出自粛によって大幅に売上げが減少しましたが、引きこもる人が増えたことでフードデリバリーの需要は急速に拡大。GrabではGrabPayという決済システムを提供していますが、経済が停滞しているため利用者は減少しています。フードデリバリーのように需要が拡大しているものは一部であり、全体的に見ると低迷していると言えるでしょう。

新型コロナウイルスによってもたらされる移動への取り組み

新型コロナウイルスによって多くの企業が甚大な被害を被る中、新しいニーズに対応したサービスが現れています。

ホンダやいすゞは、新型コロナウイルス感染者を搬送するための専用車両の提供を開始しました。また、オンデマンドシャトルを提供しているスタートアップ企業のnearMeは、通勤用のオンデマンド相乗りタクシーの提供を開始。テレワークが推進されていますが、まだまだ通勤されている方は多くいる。しかし電車での通勤はリスクが高いということで、限られた人数でなおかつ一定の距離を保ちながら相乗りで通勤をするというニーズが生まれ、相乗りできるオンデマンドシャトルとしてサービスに落とし込まれました。そのほかにも、福山のアサヒタクシーや長岡のつばめタクシーが、人を乗せないタクシーサービスとして、買い物代行を始めています。

このように、新たなサービスが誕生していますが、新型コロナウイルスによって移動はどのような変化を強いられているのでしょうか。私は次の3つの変化があると考えています。

強制的に進む移動の効率化

感染防止のため「不要不急の外出は自粛を」と言われたことで、旅行や通勤・通学が制限されるようになりました。それに伴い、移動の効率化は強制的に進んでいくでしょう。

生活に密着した移動サービスが乱立する

そしてこれを機に、一気に増えたのが先ほど紹介した通勤タクシーや患者の搬送車、買い物代行サービスなど、生活に密着した移動サービスです。大事なポイントは、10〜20年先に必要とされる最先端の技術よりも、まずは目先にある課題を解決するためにサービスが提供されること。新型コロナの収束はまだ見通しがつきませんので、特別な先進的な技術を使かわなくとも、お客様の課題に即したサービスが次々と誕生することでしょう。

経済の再開に向けた新しい消費や出会いを生むサービスの創出

自粛明けの経済再開に向けて、新しい消費や出会いを生むような新しい移動を促すサービスが増えていくのではないかと考えています。コラボレーションが加速し、さまざまな企業が手を取り、新しいサービスを生み出していく、これらが、コロナによってなかば強制的に変化をもたらされることだと思います。

Covid-19によって企業に求められる4つの変化

アフターコロナ、Withコロナ。モビリティ業界に関わらず、世の中全体として、どのような変化が求められるかを4つの項目でまとめました。

コスト/投資:コロナ以前の日本では、企業の内部留保が過去最高水準にまで高まり、キャッシュが大量にありました。そしてそれを未来に向けて活発に投資してきたわけですが、現状はどの企業も「Cash is King」という考えに方向転換し、生き延びるために不要なコストを全部カットする方へと向かわざるを得なくなる。

製品:未来に向けて新しいものを積極的に試す動きが強かったのですが、「Nice to Have」では売れないため「Must Have」へと考えがシフト。人々にとって今、必要な製品を作って提供する方向へピボット。

働き方:オフィスへの出勤や顧客訪問といったスタイルから、テレワークやウェブミーティングなどのオンラインへと移行するでしょう。
企業としての価値観:売上げ成長率や革新的な新規事業、個々人のパフォーマンス向上を重視していた方向から、売上げや利益はもちろんながら、それが世の中にとって持続可能性があるのかを重視するようになる。将来に向けた先進的な技術よりも、まずは足元の課題解決ができているか、リモートワークが進む中で社員の皆様のメンタルのケアや働きやすさが担保されているのかを重視するような文化に変わっていくのではないでしょうか。

新型コロナウイルスによる変化をポジティブにするには

新型コロナウイルスの影響で、働き方や企業の価値観は強制的にアップデートされ、元の状態に完全に戻ることはないと言われています。逆を言えば、働き方や価値観を次世代に向けて強制的にアップデートしていく前向きな機会と捉えられるのではないでしょうか。しかし、変化には多くの痛みも伴います。先ほど羅列したような変化は、近い未来に起きるはずだった、より持続的で本質的な変化だと個人的には思っていますので、そこを強制的に素早くアップデートすることで、新たなチャンスを見出せるかもしれませんし、新たな価値が生まれる瞬間に立ち会えるかもしれません。

最後に、新型コロナウイルスによる変化をポジティブに捉える4つポイントをまとめて紹介します。

顧客の課題解決を中心とした事業へ

既存事業はより筋肉質な体制を構築し、コストを絞る。そして技術ありきというより、お客様の課題解決を中心に置いた、カスタマーセントリックな製品にブラッシュアップしていくチャンスと捉えましょう。

新たなサービスの創出

移動が強制的にアップデートされていけば、そこに新たなニーズが生まれます。先ほども新たなサービスを3つご紹介しましたが、これらは今までに何千億、何兆円と投資してきた先進的な技術が作るのではなく、新たなニーズにスピードを持って対応し、アイデアやチャレンジによって生み出されたもの。新しいプレイヤーや新たなコラボレーションによって、チャンスが見出せる領域になるのではないでしょうか。

協業関係の構築

昨年までは10年、20年先に向けていかに新しいものを作るかという視点で、未来に向けた投資が活発に行われてきました。しかし今は各社とも、まずは生き残っていけるか、具体的な足元の課題をどう解決するかなど、地に足のついた議論が増えてきていると感じます。それぞれが似たような2歩先の未来に投資をして、同じようなものを作るのではなく、まずは競合だった企業同士が協業して1歩先の新しいサービスを作っていく。それがポジティブなチャンス獲得につながると考えています。

迅速な対応で相対的な差をつける

濃淡はあれど、新型コロナウイルスによる影響は誰にでも起こり得る変化です。これに早く対応することで、相対的に周りよりも早く自分を、会社をアップデートして、相対的に差をつけるチャンスだと捉えるべきかもしれません。

ここまで一気に解説をしてきましたが、残りのお時間で、参加者からの質問にいくつか回答させていただきたいと思います。まず1つめは…。

質問スライドの15ページの図について、今後このページの右の図のような切り分けが重要になってくると思うのですが、それはもう「早い者、強い者勝ち」になるのか。どこかコントローラーが出てくるのでしょうか。

基本的には、ビジネスの大原則にある通り早い者勝ち、お客様に価値を提供した者勝ちだと思っています。ただ、コントローラーという意味では各国の規制にかなり影響される領域ですし、実際に欧米や東南アジアでライドシェアが進んでいるのは、規制が一部緩和されたからというところもあります。そうなると、政府が各国と協調してルールを作っていく、消費者にとって価値のあるルールを整備することがコントローラーとしての役割を果たすことになるかと考えております。

質問移動を効率化するところのサービスは、今はインフラ的なものであり、新しい出会いや消費といった付加価値が高いところよりも利益率が低くなることが必至だと思っております。そういったところを乗り越えてビジネスを展開していくためには、どういう工夫が必要になると思いますか。

MaaS事業者や一つの業者が独占すると、そこに富が集中して周辺にいる産業の利益率が下がり、いわゆるGAFAに代表されるようなプラットフォームと同じような状況になってしまいます。

また効率化の部分はおっしゃる通りコモディティ化しやすいですが、浮いた時間で新しい出会いや消費を生むような付加価値の高い提案を同時に行うこともできるのではと考えています。私の個人的な思いとしては、一つの事業者やプラットフォームに全てを集約して、そこがすべてのデータや利益を吸い上げるのではなく、さまざまなプラットフォーマーやサービス事業者がパイを分け合うような、コラボレーションが成り立つ業界にする——つまり、みんなのインフラをみんなで作っていけないかと考えています。

質問21ページのスライドについて。アメリカ以外の他国の巨大自動車メーカーはどうなっていくのでしょうか。例えばルノーは、工場再開に拒否行動という話しもあります。また、GMには人工呼吸器を短期間のうちに量産する”早さ”がありますが、日本の巨大製造業でも、そのような早さが実現できれば作れる、世界が変わる、という可能性があるということなのでしょうか。

そうだと思います。実際、トヨタはマスクの製造を始めていますし、一部で自動車と関係のないものに対しての製品提供もしています。そこはまさにスピードと、あとは経営者の意思決定次第ではないでしょうか。

最後に。新型コロナウイルスによって、私たちと世の中は変わることを迫られています。世界でも有名な製造業であるトヨタやSONY、パナソニックといった企業は、厳しい戦後を乗り越え、日本の高度経済成長期を押し上げてきました。日本人は、変化が起きたときに素早く対応し、新しい土壌でコツコツと、足元の課題を解決することに非常に長けた人種です。モビリティ業界はこれまでにトヨタをはじめ日本のメーカーが引っ張ってきましたが、現在はCASEの流れで海外勢に少し押され気味になっています。しかし、この未曽有の危機を新たなチャンスへと塗り替え、企業同士がコラボレーションし、ゼロから立て直すことができれば、日本がまた、モビリティの業界でプレゼンスを発揮する機会へと転換できるのではないでしょうか。

もちろん、一筋縄ではいかないところも多くありますが、本セッションでは新型コロナによる現実を正面から捉えたうえで、これからの未来、モビリティ、移動について、私の考え方を述べさせていただきました。

最後に本日の講演資料が、Mobility Transformationの公式サイトからダウンロードできますので、GoogleやYahoo!で「Mobility Transformation」を検索いただき、ぜひご参考いただければと思います。お付き合いいただきありがとうございました。

Mobility Transformation 2020のサマリーレポートと全講義資料を無料でダウンロードいただけます

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